抗核抗体検査の種類と特徴


林 伸英 (はやし のぶひで)
神戸大学医学部附属病院中央検査部


はじめに

 抗核抗体の検出は、膠原病の診断、治療方針の決定、予後の推定において重要な検査である。抗核抗体の検出方法は、スクリーニング検査として用いられる総合的抗核抗体の検出法と個々の抗核抗体(疾患特異的抗核抗体)を個別に検出する方法がある。スクリーニング検査では、間接蛍光抗体(indirect immunofluorescence; IF)法が世界的に多くの施設で用いられている。近年、HEp-2細胞(ヒト喉頭癌由来培養細胞)抽出抗原や特異抗原(精製またはリコンビナント)を固相したEIA法も開発され、自動化が可能となった1)。ここでは、スクリーニング検査としての抗核抗体検査の種類と特徴を解説する。


1. 間接蛍光抗体法

 1957年にFriouら2)が抗核抗体検査にIF法を応用し、現在では最も広く使用されている。近年、核材が臓器切片からHEp-2細胞へ変更され3)、より高感度となりセントロメア抗体も検出できる利点が出てきた反面4)、健常人での陽性率が高く、特異度が低いこと、施設内および施設外変動の存在などの問題点が指摘されている5)。さらに、この方法は操作が煩雑で、判定が目視のため客観性に乏しい上に、検査に習熟を必要とする。最近、これらの欠点を改善するために、ELISA測定装置を使用した染色操作の自動化や抗体価測定を省力化できる蛍光画像自動解析装置の応用も可能となった6)。IF法は、その対応抗原により染色型が異なるため、染色型の判定は疾患特異的抗核抗体の鑑別に重要であると考えられてきたが、セントロメア型やPCNA型など一部のものを除いて直接診断にはつながらず、無視してしまう臨床医も少なくない。図1にHEp-2細胞を核材としたIF法の原理を示した。
 1997年にTanらは、IF法において、多くの全身性エリテマトーゼス(SLE)、強皮症(SSc)、シェーグレン症候群(SS)では1:320以上の抗体価を示すこと、健常人の陽性率が1:40希釈で31.7%、1:160希釈で5.0 %と高率であったことから、自施設での健常者による1:40希釈と1:160希釈の陽性率を明記して検査結果を報告するよう勧告している5)。また、図2に示すように著者らが行った日本人での調査でも健常人陽性率(1:40希釈)は26.8%と高率で、健常人は低抗体価に多く分布し、SLE、SSc、SS、混合性結合組織病(MCTD)、皮膚筋炎・多発筋炎(DM/PM)は1:160希釈以上の高抗体価に多く分布していることがわかった(慢性関節リウマチRAは健常人分布に近い)7)。したがって、健常人と膠原病を鑑別する上でIF法は定性検査のみの判定ではなく、定量検査も実施する必要がある。

図1 HEp-2細胞を核材としたIF法による抗核抗体検査の原理


図2 健常人と膠原病における抗核抗体抗体価の分布
             文献7) を改変引用.

2. EIA法による検査法

 最近、世界的にHEp-2細胞抽出抗原や特異抗原(精製抗原またはリコンビナント抗原)を固相したEIA法が開発されてきた。これらの測定法は、使用抗原の種類によって、疾患感度や疾患特異的抗核抗体への反応性に大きな差がみられる8)。ここでは日本で販売されているキットについて紹介する。

1) 天然抗原を使用した検査法

 EIAキット(KW)・ANA(協和薬品工業)は、HEp-2細胞の核分画(核のみ)をマイクロプレートに固相した2ステップEIA法による検査キットである(図3A)。IF法に合わせたカットオフ値の設定を行っているため、IF法と同じような感度、特異度になると考えられる。與田ら9)の報告によると、操作説明書どおりのカットオフ値を使用した場合、SLEにおける感度は95%、特異度は90%であった。MAOS(パックス)やBEP-III(デイドベーリング社)等のELISA測定装置を使用することで自動化が可能である。

図3 EIA法による抗核抗体検査の原理

A: EIAキット(KW)・ANA

B: MESACUPTM ANAテスト

H2O2: 過酸化水素

C: COBASTM Core HEp2 ANA EIA

TMB: テトラメチルベンジジン

             文献1) を改変引用.
 

2) リコンビナント抗原を使用した検査法

 MESACUPTM ANAテスト(MBL社)は、リコンビナント抗原(RNP-A, RNP-C, RNP-70kD蛋白, 60kDSS-A, SS-B, CENP-B[セントロメア抗体の対応抗原の一つ], Scl-70, Jo-1)、精製抗原(Sm, SS-A)、λファージDNAを混合し、マイクロプレートに固相した2ステップEIA法による検査キットである(図3B)。使用抗原に対応したU1RNP抗体、Sm抗体、SS-A抗体、SS-B抗体、Scl-70抗体、セントロメア抗体、Jo-1抗体、DNA抗体の8種類のみに限定したスクリーニング検査であり、それ以外の抗核抗体は当然検出できない。浅沼ら10)の報告によると、8種類の疾患特異的抗核抗体を捉える感度は93%であった。この検査キットは最近、改良され、疾患特異的抗核抗体陽性検体の偽陰性が少なくなったことが報告されている10)。ELISA測定装置を使用することで自動化が可能である。

3) 天然抗原およびリコンビナント抗原を使用した検査法

 COBASTM Core HEp2 ANA EIA(Roche Diagnostics社製造、MBL社販売)は, 1)と2)のhybridの検査法で、ビーズ固相2ステップEIA法である(図3C)。全自動酵素免疫測定装置COBAS CoreII(Roche Diagnostics社)の専用試薬である。固相化抗原は、HEp-2細胞抽出抗原および7種のリコンビナント抗原(60kDSS-A, 52kDSS-A, SS-B, Scl-70, CENP-B, Jo-1, dsDNA)である。天然抗原だけでは固相される種々の抗原量に差がでるため、疾患特異的抗核抗体の反応性の変動が大きくなる。弱い反応性の抗核抗体に対してリコンビナント抗原の追加により反応性の均等化を行っている。著者らは、抗体価の分布がIF法と同様に、健常人では低抗体価に、膠原病群では高抗体価に偏っている特徴があることから(図2)7)、IF法と本法を比較し、SLEなど6種の膠原病患者におけるそれぞれのreceiver operating characteristic (ROC)分析から、IF法では1:40希釈と1:160希釈、本法ではindex 0.6と0.9の二つのカットオフ値を使用することの有用性を報告している12)。すなわち、図4に示すように、健常人と膠原病患者を鑑別するためにはIF法では1:160希釈を、本法ではindex 0.8から0.9をカットオフ値として用いることが適切である。また、本法のAUC(area under ROC curve)はIF法のAUCより有意に大きいことから、その鑑別能力はIF法に勝るとも劣らない。一方、カットオフ値をIF法なら1:40希釈、本法ならindex 0.6とすることにより、疾患特異的抗核抗体の存在をほぼ確実に否定できる。

図4 ROC曲線の比較

RAを除く膠原病患者258例を疾患群、健常人女性257例を対照群とし、
IF法とEIA法(COBASTM Core HEp2 ANA EIA)のROC分析を行った。
            文献12) を改変引用.

3.IF法とEIA法の長所・短所

表 抗核抗体検査におけるIF法とEIA法の特徴       文献1) を引用.

IF法

EIA法

長所

染色型による対応抗原の推測が可能

自動化が可能

セントロメア抗体の高感度検出(HEp-2細胞)

操作が簡便

細胞質抗体の検出が可能(ある程度まで)

コンピューター化しやすい(結果の処理)

安定した客観的データが得られる

抗体価の推移観察が可能

短所

自動化しにくい(染色操作は自動化可能)

対応抗原の推測が不可(染色型の観察が不可)

手技が煩雑で検査に習熟を要する

固相化抗原の種類や量によって反応性に差がでる

判定が客観的でない

術者や顕微鏡の差によるデータの変動がある

抗体価の詳細な推移観察には不向き

試薬コストが高い(定量法の実施)

健常人での陽性率が高い(特異度が低い)


 表に示すように、IF法は高感度であるが、操作が煩雑で判定に習熟を要するなど、難点も多い。EIA法は、ELISA測定装置などを用いれば容易に行え、効率面や客観性の点で優れて、IF法で検出しにくいSS-A抗体やJo-1抗体は、むしろEIA法で検出率がよい場合もある。さらに、EIA法は客観的な定量値で抗体価が得られるため、臨床経過を継続的に観察することにより、疾患活動性の評価や治療効果の判定にも有用である13)。しかしながら、EIA法は使用抗原の種類や量によって疾患特異的抗核抗体への反応性に差があり、どのキットも改良の余地を残していることも事実である。
 リウマチ科の臨床医は従来からIF法のデータに慣れ親しんでおり、使用抗原による反応性が異なるEIA法に戸惑いを感じ、EIA法の導入に慎重になるであろう。また、アメリカリウマチ学会のSLEの分類基準の1項目にIF法による検査が入っているため、SLEを疑う場合はまずIF法を実施する場合が多い。したがって、現時点において、臨床側の理解を得ず、IF法からEIA法への全面的な移行は大きな混乱を招くと考えられるだろう。


おわりに

 抗核抗体のスクリーニング検査に完璧な測定法は存在しないし、EIA法は第一歩を踏み出したばかりである。現時点においては、検査の選択肢としてIF法をなくしてしまうことは難しい。EIA法の導入は、反応性などの特徴をよく理解した上で、選定することが重要である。


文献

1) 林伸英, 熊谷俊一: 抗核抗体検査のEIAの自動化法. 検査と技術, 29: 1412-1415 2001

2) Friou GJ: Clinical application of lupus serum-nucreoprotein reaction using fluorescent antibody technique. J Clin Invest 36:890-898,1957

3) Kozin F, Fowler M, Koethe S: A comparison of the sensitivities and specificities of different substrate for the fluorescent antinuclear antibody test. Am J Clin Pathol 74:785-790,1980

4) Tan EM, Rodnan GP, Gracia I et al: Diversity of antinuclear antibodies In progressive systemic scleosis:anti-centromere antibody and Its relationship to CREST syndrome. Arthritis Rheum 23:617-625,1980

5) Tan EM, Feltkamp TEW, Smolen JS et al: Range of antinuclear antibodies In "healthy" Individuals. Arthritis Rheum 40: 1601-1611,1997

6) 山崎順子, 陣内記代, 野口昌代, 他: 蛍光画像自動解析装置「Image Titer」による抗核抗体測定の評価. 医学と薬学,44: 961-968, 2000

7) Kumagai S, Hayashi N: Immunofluorscense-still the 'gold standard' in ANA testing?. Scand J Clin Lab Invest 61: 77-83, 2001

8) Emlen W and O'neill L: Clinical significance of antinuclear antibodies: comparison of detection with immunofluorescence and enzyme-linked immunosorbent assays. Arthritis Rheum 40: 1612-1618, 1997

9) 與田一男, 高橋智哉, 渡部照代, 他: エンザイグノストAANAキット(ELISA法)による抗核抗体の測定. 新薬と臨床 44: 156-165, 1995

10) 浅沼浩子, 三宅淳子, 宮脇昌二: 抗核抗体スクリーニング検査法の新たな試み-ELISAによる疾患標識抗核抗体のスクリーニング法の検討-. 日本臨床免疫学会会誌, 20: 417-427, 1997

11) 浅沼浩子, 宮脇昌二: ELISAによる疾患標識抗核抗体のスクリーニング法-改良型MESACUP ANAテストの評価-. 医学と薬学,45: 929-938, 2001

12) Hayashi N, Kawamoto T, Mukai M, et al: Detection of antinuclear antibodies by use of an enzyme immunoassay with nuclear HEp-2 cell extract and recombinant antigens: Comparison with immunofluorescence assay in 307 Patients. Clin Chem 47: 1649-1659, 2001

13) 宮脇昌二: 間接蛍光抗体法による抗核抗体検査の現状と問題点. 日本臨床免疫学会会誌, 21: 1-10, 1998

 

 

 

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