骨髄採取
全身麻酔下、腹臥位で、腸骨の左右それぞれ3〜5ヶ所から、1回に数ml程度の骨髄液を採取する(末梢血混入を避けるため)。採取量は同種移植の場合で細胞数:3(2〜5)×108/Kg(患者体重あたり)、自家移植の場合で1〜3×108/Kgを目標として採取する。
図6 図7
図6、7は当センターでの骨髄採取の様子です。2人のドクターで採取し、隣のバッグに集め、細胞数を測定して目標細胞数に達するまで、採取限度量内で骨髄を採取します。
採取量上限(ドナー体重あたり) 採取前健康診断時Hb(g/dl)
12ml/Kg 12.5未満
15 12.5以上13.0未満
18 13.0以上13.5未満
20 13.5以上
成人間の移植では採取量は700〜1200mlになるため、自己血の準備が必要である。
ABOmajor不適合の場合、赤血球を除去する。
ABOminor不適合の場合、血漿を除去する。
図8は採取後の骨髄液です。遠心して血漿を除去しているところです(minor
mismatchの場合、図9)


図8 図9
当センターにおける同種骨髄移植のスケジュール
day-30〜
入院、検査、他科受診、皮内テスト、HLAの確認、患者、家族へのムンテラ
day-20頃 髄注
day-16〜 腸内殺菌薬剤開始
day-13頃 IVH挿入
day-10 胸部X-P、ECG、無菌室入室
day-9
前処置開始(CA+CY+TBI)
day-1〜
免疫抑制剤開始
day0 BMT
day1〜
G-CSF投与 抗ウィルス剤投与

図10
図10は、当センターで骨髄移植を施行した患者さんのデータです。前処置によって白血球と血小板が急激に低下し、移植後day17頃より白血球の上昇が見られます。Day0頃より血小板輸血を頻回に行っていますが、白血球よりやや遅れて回復が見られます。
検査
・
入院時:chestX-P、ECG、肺機能・血液ガス、心エコー・ホルター心電図、抗CMV抗体、抗HSV抗体、抗VSV抗体、HBs抗原・抗体、HBc抗体、HCV抗体、HIV抗体、HTLV-1抗体
・ BMT前より2週間に1回BNP測定
・ 無菌室入室前にchestX-P、ECG必ず
・ 前処置開始時点より少なくとも週3回CBC、生化学
・ 培養(咽頭・尿・便)適宜
・
BMT後は少なくとも週1回シクロスポリン血中濃度測定(内服に変更後は少なくとも週2回)
・ 白血球回復後は1〜2週間に1回 C7-HRP測定
・
無菌室解除後速やかにchestX-P、ECG、心エコー(chestX-Pは1〜2週間毎)
・ BMT
1ヶ月後にマルク:塗抹、病理、染色体、表面マーカー、遺伝子検査、その他、ドナーが患者と同姓の場合、キメリズム解析(移植前、レシピエント)
輸血について
血液製剤は放射線を照射(15Gy)してから輸血、白血球除去フィルターを使用する。
赤血球(MAP)
ABO major
mismatch(例:患者O型、ドナーB型)では患者型
minor mismatch(例:患者A型、ドナーO型)ではドナー型
major&minor
mismatch(例:患者A型、ドナーB型)ではO型
血小板・凍結血漿
major
mismatch(例:患者O型、ドナーB型)ではドナー型
minor mismatch(例:患者A型、ドナーO型)では患者型
major&minor
mismatch(例:患者A型、ドナーB型)ではAB型
移植後より退院まで
a.クリーン解除まで:出血、感染、GVHDに注意して指示どおり経過観察する。
b.クリーン解除後よりday30まで:急性GVHDやgraftfailureに注意して経過観察。食事についてはクリーン解除した時点で開始するが、患者の状態によっては、2-3日延期する。流動食より開始し、適宜内容を変更する。クリーン解除後よりday30までは個室入室とする。
c.day30よりday60まで:day45を越える頃より特にウィルス感染(サイトメガロ、ヘルペス)に注意する。
図11、12は当センターの無菌室です。ビニールカーテンによって仕切られ、カーテン内の空気は特殊フィルターを通って無菌の風が流れます。医師・看護師が頻回に入室すると汚染されますので身の回りのことは極力、自分でしなければなりません。室内には洗面台・ウォシュレットトイレ・シャワー・テレビ・ナースコール・ヘッドランプ・電話があります。洗面台とトイレの水は無菌水が出ます。
図11 図12


移植成績
当センターで実施した造血幹細胞移植の年次推移を図13に示しました。

図13
当センターで実施した全同種移植の生存曲線を図14と図15に、生存率と無病生存率を表10に、示します。5年生存率は0.4277、5年無病生存率は0.4454です。
表10.成人病センターにおける同種移植成績
|
症例数 |
1年 |
2年 |
3年 |
4年 |
5年 |
|
|
全生存率 |
115 |
0.7318 |
0.5429 |
0.4848 |
0.4277 |
0.4277 |
|
全無病生存率 |
115 |
0.6296 |
0.4768 |
0.4639 |
0.4639 |
0.4454 |
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図14 図15

図16
図17
当センターで実施した同種移植の疾患別割合を図16に、生存率を図17、表11に示します。全同種移植115例中(2002年8月現在)、急性骨髄性白血病(AML)の生存率は0.3583(症例数26例)、急性リンパ性白血病(ALL)は0.4318( 26例)、慢性骨髄性白血病(CML)は0.4137( 30例)、骨髄異形成症候群(MDS)は0.2000( 5例)、再生不良性貧血(AA)は0.8333( 5例)、悪性リンパ腫(ML)は0.8000( 5例)、多発性骨髄腫(MM) は0.5000(2例)です。
同じく図18にドナーの割合を示します。血縁64例(56%)、非血縁51例(44%)で、内訳が同胞62、両親2、国内バンク43、海外バンク4、臍帯血バンク4例です。
表11に同種移植の割合と生存率を示します。HLA一致度では、HLA一致99例、1座不一致(DNA型)10例、2座不一致(DNA型)6例です。。ドナー別の生存率は、血縁が0.5061、非血縁が0.3003血縁者間での移植の方が成績は良い傾向にあります(図19)。
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| 図18 | 図19 |
表11.成人病センターで実施した同種移植の割合と生存率
|
症例数 |
% |
1年 |
2年 |
3年 |
4年 |
5年 |
|
|
AML |
42 |
37 |
0.6906 |
0.5415 |
0.4778 |
0.3583 |
0.3583 |
|
ALL |
26 |
23 |
0.7477 |
0.4798 |
0.4318 |
0.4318 |
0.4318 |
|
CML |
30 |
26 |
0.6735 |
0.4964 |
0.4964 |
0.4137 |
0.4137 |
|
AA |
5 |
4 |
0.8333 |
0.8333 |
0.8333 |
0.8333 |
0.8333 |
|
MDS |
5 |
4 |
0.8000 |
0.4000 |
0.2000 |
0.2000 |
0.2000 |
|
ML |
5 |
4 |
1.0000 |
0.8000 |
0.8000 |
0.8000 |
0.8000 |
|
MM |
2 |
2 |
1.0000 |
1.0000 |
0.5000 |
0.5000 |
0.5000 |
|
血縁 |
64 |
56 |
0.8208 |
0.6064 |
0.5501 |
0.5061 |
0.5061 |
|
非血縁 |
51 |
44 |
0.5979 |
0.4455 |
0.4455 |
0.3003 |
0.3003 |
|
HLA-match |
99 |
86 |
0.7273 |
0.5284 |
0.4798 |
0.4233 |
0.4233 |
|
1 Locus |
10 |
9 |
0.8000 |
0.6857 |
0.5143 |
0.5143 |
* |
|
2 Locus |
6 |
5 |
0.5000 |
* |
* |
* |
* |
これからの展望
造血幹細胞移植は造血器悪性腫瘍及び難治性血液疾患に対する治癒的治療法として確立され、対象疾患も固形腫瘍や先天性代謝異常症へと広がり、幹細胞源も骨髄、末梢血、臍帯血へと広がってきましたが、治療成績を左右する原因として、感染症、移植前治療関連毒性(RRT)、GVHD・GVLが重要であり、これらを管理、予防することが重要な課題であり、より安全な造血幹細胞移植をめざして研究の進展が望まれる。また、これから症例数が増加すると思われる臍帯血移植やミニ移植の治療成績の動向に注目していきたいと思います。
謝辞
今回の報告にあたり、ご指導とデータの提供をしていただきました当センター血液内科 村山徹先生、水野石一先生、波戸章郎先生に深謝いたします。
参考文献
1) 小寺良尚
編:やさしい造血幹細胞移植へのアプローチ 医薬ジャーナル社 2001
2) 井関徹:造血細胞移植はどのような治療法か? 臨床医 2001.Vol27
No2
3) 坂巻壽:造血細胞移植の現状と問題点 臨床医 2001.Vol27 No2
4) 岡本真一郎:造血幹細胞移植の新しい展開 臨床医 2001.Vol27 No2
5) 森慎一郎:多様化する造血幹細胞ソースの至適利用 臨床医 2001.Vol27
No2
6) 北折健次郎ほか:骨髄バンク・さい帯血バンク 臨床医 2001.Vol27
No2
7) 小寺良尚:同種造血幹細胞移植の現状と展望 分子細胞治療8 特集
同種造血幹細胞移植の進歩と問題点 Vol.1 no.4 2000
8) 加藤剛二:臍帯血移植 分子細胞治療8 特集
同種造血幹細胞移植の進歩と問題点 Vol.1 no.4 2000
9) 竹中克斗ほか:同種末梢血幹細胞移植 分子細胞治療8 特集
同種造血幹細胞移植の進歩と問題点 Vol.1 no.4 2000
10) 峯石真ほか:骨髄非破壊的移植(ミニトランスプラント) 分子細胞治療8 特集
同種造血幹細胞移植の進歩と問題点 Vol.1 no.4 2000
11) 平岡諦:免疫抑制の進歩 分子細胞治療8 特集
同種造血幹細胞移植の進歩と問題点 Vol.1 no.4 2000
12) 小寺良尚:総説 造血幹細胞移植 最近の動向 SRL宝函
特集幹細胞移植 最近の動向Vol.26 No.1 2002
13) 峯石真:ミニ移植−細胞免疫療法の現状と今後− SRL宝函
特集幹細胞移植 最近の動向Vol.26 No.1 2002
14) 原田実根:造血幹細胞移植に伴う感染症 SRL宝函 特集幹細胞移植
最近の動向Vol.26 No.1 2002
15) 山根孝久ほか:同種骨髄移植 臨床病理
骨髄移植・末梢血幹細胞移植の実際と臨床検査 1995 .7・臨時増刊 特集
第99号
16) 日本造血細胞移植学会 全国データ集計事務局:平成13年度
全国調査報告書 2001.12
17) 日本造血細胞移植学会:造血幹細胞移植の適応 ガイドライン
2002.4
18) 兵庫県立成人病センター血液内科:骨髄移植指示書 2002.8.9
19)
兵庫県立成人病センター6階西病棟:骨髄移植を受けられる方へ
兵庫県立成人病センター 検査部 明石市北王子町13-70 〒673-0021 TEL 078(991)1151